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民事信託と商事信託の違い
1 商事信託
商事信託とは一言で言うなら,営利を目的とする信託です。
信託では自己の財産を信頼できる者に託すことになりますが,商事信託では財産を託される者は,信託業法の定めにより内閣総理大臣から免許を受けた者で,収益または報酬を得る目的で財産を引き受けることになります。
代表的な例としては投資信託などが挙げられます。
投資家が自己の財産を専門家に託し,専門家は定められたルールに沿ってその財産を運用します。
運用の結果,利益が出れば投資家それぞれの投資額に応じてその利益を分配し,専門家はその報酬を得る,という仕組みです。
商事信託は主に資産運用を目的として利用されています。
2 民事信託
一方,民事信託を一言で言うなら営利を目的としない信託です。
財産を引き受けた者はその管理,運用を原則無償ですることになりますが,信託業法の影響を受けませんので,未成年者,成年被後見人等一部の者を除いて個人,法人を問わずに誰でも財産を引き受けることができます。
商事信託では財産を引き受けるのは専門的な知識,経験を有する人になりますが,民事信託では家族などの財産を託す人と強い信頼関係を有する人が財産を引き受けることが多いようです。
というのも資産運用を主な目的とする商事信託に対して,民事信託は信託の恩恵を受ける人の保護を目的として利用されることが多いからです。
3 民事信託の具体例
より具体的な例を挙げると,何らかの原因で,自分自身が生活するのに十分な収入を得ることもできない,今後暮らしていけるだけの財産の蓄えも無い,また所有している財産の管理をすることも困難な人がいるとします。
民事信託を利用すればたとえその人自身に収入,財産がなかったとしても,その家族などに財産を供出してもらうことで,その後の生活資金を確保することができます。
また家族の別の誰かなどに財産の管理を任せられるのであれば自分自身で財産を管理する必要はありません。
4 民事信託の利用の増加
超高齢社会たる現代日本ではこうした民事信託のニーズが高まっています。
大正時代に信託法,信託業法が制定されて以来,信託と言えば商事信託が中心でしたが,平成18年12月の信託法改正の際には,民事信託の利用を促進すべく条文等の整備がされ,今日では民事信託の利用が年々増加しています。